昨今の時流として、今から「上手く」不動産投資を始めることは難易度の高いことになってしまっています。
それはサラリーマンに限らず、
不動産投資・不動産賃貸業の実績がない方に金融機関の融資が出にくいことが根本にあります。
「不動産投資の始め方」をインターネットで探すと、
- 新築⇔築古
- 一棟物⇔戸建
- 都市⇔郊外
- フルローン⇔頭金は重要
などの要素についての情報が様々なサイトやブログで見られます。
それらはそれぞれが異なる意見の様に見えてしまいますが
単に異なる論点で話を進められてあるだけであり、
しかし、それを見た初心者の方は何を信じればよいか混乱してしまうのではないかと思います。
そういう認識を持ったうえで、
例えば物件購入に当たっては
投資用不動産を販売する不動産屋さんは自分の得意なところをアピールし
いろんな切り口でメリットを訴えてくるかと思います。
これを客観的に見ると、
『与信を持ったサラリーマンは融資を容易く受けることができ、
業者の思うがままに物件を買わされる』
の様な、悪意を持った見方をされることすらあります。
『サラリーマンがカモにされる』というのはこう言うことです。
では『買えるサラリーマン』はどうすべきか?
と言うと、それに踊らされずに自身で物件を評価・判断
できるようになっておかなければない、と言うほかありません。
とは言え、自身でその基準を持つにしても
どう考えるべきか、どんな論点を優先すべきか、難しいところもあります。
その点に関して、大家2年目の会ではできるだけシンプルに、2つのことをお伝えしています。
その2つとは、
- 良い財務3表を自ら作り上げることができること。
- その中でも重要度は
キャッシュフロー計算書CF<損益計算書PL<貸借対照表BS
この順で、BSを最も重要度の高いものとして捉えています。
この2点。
と、ここで説明を終えても抽象度が高すぎてぜんぜん伝わりませんよね。
ということで、この記事では不動産投資を進める中で判断の基軸としている
BS:貸借対照表について語ってみたいと思います。
貸借対照表とは
財務やその周辺(税務や会計など)に触れるのであれば、財務3表や貸借対照表を見て見ぬふりはできない存在のはずですが、世間一般的には「わかりにくいこと」の代表として君臨している気すらする用語です。
事実、私も不動産賃貸業に関わる以前では「財務3表」や「貸借対照表」など、興味もなく全く知識のない分野でした。
そう、知識が無くても問題なく生きていけるんですよね。
しかし、知った今となれば、個人の資産を考える時にもそれらの知識はプラスに働きますし、サラリーマンとして働くとしてもそれらを知っているのかそうでないのかで、様々な場面でレベルの違う判断ができるようになると思います。つまりは会社がより多くの利益を生みだすための働きができるようになるとすら思います。
で、結局、貸借対照表は何を表すかと言うと、それは
「正味財産」
であると言えます。
不動産投資・不動産大家業もそうですが、事業を進めるにあたって元手となる資金を融資に頼る、お金を借りるという行動をとる場合が多くあります。
その借りたお金を元手に、事業を回し、利益を上げ、キャッシュを獲得していく活動、それが事業…ということも言えなく無いですね。
それは個人名義で進めていても、法人化して進めていても概念として共通の話です。
しかしいくら現金や資産を増やしたところで、実はそれはただの「借りたお金」だったりすることもあるわけで、そんな状況を分かりやすく表現したものが貸借対照表になります。
もう1段階だけ具体的に言うと、手持ちの資産額と借り入れなどの負債額の差が「正味財産」=「純資産」であり、それを増やしていくことが事業経営の根本の目的であると言っても良いと思います。
決算や確定申告をするため、節税をするためだけの道具として財務三表を使っていたとするととてももったいないことだと思ってもらった方がいいですね。
キャッシュフロー経営
蛇足ですが、ひとむかし前、不動産投資ブームの時には「キャッシュフロー」を得る!
みたいなノリでCFが重要視をされていました。
この話で言うところのCFの定義は
家賃収入ー返済額(利息含む)ー維持費・管理費(※この項は考慮しない場合も有り)
みたいなものが一般的。
これ自体は間違ったものではないのですが、
このCFがいかに大きければ投資価値がある…的な説明がされていたりもしました。
従来、経営戦略としての「キャッシュフロー経営」という考え方も知れ渡っています。
しかしそれと錯誤するように不動産投資でキャッシュフローにだけ注目し
「不動産投資ではCFが重要⇒キャッシュフロー経営をしていきましょう」
と言う具合に的をズラし、物件を売りやすい市場にしていった雰囲気もあります。
不動産投資でキャッシュフロー経営を謳っている場合は、
「当面のキャッシュフローは出る。でも実際には先々資産が積み増せて行けない…」
ような弱含みの物件でも強気で売ってしまうための語り口であったりもするのではないかと思っています。
なお、一般的に言われるキャッシュフロー経営の意図するところは
「事業の運転は自らの事業経営で得られるキャッシュフロー内で行える状況を作る」
ということです。
それが実現できると融資に頼らないことで利息分の費用は削減されるし、
過大な在庫を抱えない事業経営はリスクも抑えることができる…
と言ったメリットを得られる経営の考え方です。
先々資産が積み増せる物件と…
上記の文中に書いた「先々資産が積み増せて…」と言う観点が不動産大家業では非常に重要です。
不動産投資・不動産大家業は長きに渡って安定して利益を得続けることができる事業だと言われたりもします。
しかしその実、その長きの後、物件そのものや世間がどう変わっているかは誰にも分らないことです。
読み切れない未来の状況の中でも、安定感を持って利益を生みだせる物件、
それが物件に対する理想ですが、実際そう感じられる物件は”存在しない”と考えてもらうのが無難かと思います。
物件自体に理想を抱くのではなく、
先々資産を積み増していける状態にオーナーが物件や入居者、関係者に働き掛けていく。
つまり、未来に望む財務3表やBSを描き、それを現実のものにするための働き掛け。
それが実際に実現できそうな理想のための行動ができることが最重要であるように思います。
まとめ
と言うわけで大きくまとめると、不動産大家業をするなら
「目標とするバランスシート」
「未来にそのバランスシートを実現するための働き掛け方」
をしっかりと策定し、ひとつひとつ実行していくのがより安全で確実な道だと思います。
そんな自覚を持ってすれば初心者レベルは簡単に脱せますし、
カモにされるような事は決して無くなるでしょう。